南弓子『耳とミーとヒー』
冒頭、舞台奥に白く細い2本の腕が浮かび上がる。腕だけが白くぼおっと。いや、それが腕、と気づくのに少々時間がかかった。身体のどこか、というのは分かる。しかし、見たことのない形にたじろぐ。すぐにそれは、グニグニとこのうえなく奇怪な動きをし始める。人間の身体にこんな動きをする部位があったのか、とおののく。まるで、エイリアンのごとき異形の生物の体が脈打っているようだ。
・・・やはりすごかった南弓子。昨年のダンスボックス10周年イベントで発見して、ずっと観たかったダンサー。その特異な身体性は一見の価値あり。今貂子のもとで鍛えられた踊りも申し分ない。作家としても、タイトルに覗く感性に見られるように独特。今回は、こちらも異形のダンサー・竹ち代毬也をしたがえ、ゾッとする怪作をつくりあげた。特に、眩暈のするような光と爆音が炸裂する空間を舞台下手のドアの向こうにつくりあげ、それを舞台に放射するシーンは圧巻。しびれた。