▼このブログについて(更新停止中)
2004〜2009年夏頃までの関西のコンテンポラリーダンス公演をメインとした目撃録です。その時期に関西であったコンテンポラリーダンス公演の8割方は観てると思います。その他、民俗芸能、ストリップ、和太鼓、プロレスなども。2000年の維新派『流星』から見始めて、多い年は年間270本。2007年は、エジンバラフェスティバル、ダンスアンブレラなど半年に渡る欧州漫遊の記。2010年以降もぼちぼち劇場には出かけていますが、更新する時間はなくなり現在放置中のブログです。


踊りに行くぜ!!vol.9 栗東

08年12月12日 19:00
栗東芸術文化会館さきら 中ホール

噂の山賀ざくろ×泉太郎『天使の誘惑』。山賀がビデオカメラの前で所在なげに佇んだり踊ったりポーズしたりする。その映像が映った小さなモニターに泉太郎がマーカーで落書きを書いては消し、書いては消しし続ける。その落書きも含めた映像を舞台後ろの大スクリーンに映す。山賀の身体の線や動いた軌跡が、泉のマーカーのラインとなって躍ってるのが見ていて面白い。個人的にはなにか懐かしい感じがした。まあ今でもああいう意味もない落書きって自分はよくしてしまうんですが・・。

いいアートですよね。今後は劇場公演としてやるより、やっぱ美術館とかで来場者も一緒に落書きや映され側に参加して楽しめるような形で行うのがぴったりです。子供とかはすごく喜ぶと思う。ぜったい楽しいぞこれは。

一方で、ダンス公演として劇場で行う分には、やはり“一回でいいや”と思ってしまわざるを得ないのがダンスとして弱いところ。複数回の視聴には堪えないと感じた。また見たい(また踊りたい)と思わせる中毒性こそがダンスがダンスたる存在価値だと考える人と、一発屋的にでもダンスをそこに発見することに重きを置く人とでは、評価はまっぷたつに分かれるだろう。


ただ、この両者の違いは“ダンスという芸術芸能そのもの”に対する視点というよりも“興行的な視点から見たダンス作品の流通における理想像・未来像”という視点での、それぞれの向いている方向の違いに注目するべきだと僕は思っている。

一体これはダンスかダンスじゃないか、なんてのは未だにヤオガチ論争をしているプロレスファンみたいでイマイチ不毛。もう少し大きな射程から捕らえると、そうしたパフォーミングアーティストがプロとしての活動をきちんと継続していける環境としての“興行のあり方”という観点から多くのことが見えてくるのではないか(そしてその“興行のあり方”によってそれを支える“批評のあり方”も微妙に違ってくるだろう、おそらく)。

まあ“興行のあり方”というとボンヤリしすぎかと思うので、分かりやすく言うとそのアーティスト/作品の“売り方、売られ方、買われ方”であり、その売買が行われる受け皿としての“マーケットの創出”というような所となる。その点で、先の両者はそれぞれ見ている先が全然違うし(それが個々の作品への評価に色濃く反映されるわけだ)、また違うことはそれはそれで、当然としてあるべき芸術芸能の多様性として一番面白い部分だろう。

例えば、それなりのキャパの劇場をツアーして回ってまたいつか再演を持っていこうとするアーティスト/作品と、コンピレーション的なイベントに出したり美術館を巡回したりして出してゆくアーティスト/作品とでは、そりゃ媒体によって文体や作法を変えてゆく物書き業と一緒で、そこで求められるモノも評価を受けるモノも違ってくる。その違いをはっきりさせないから、話は噛み合わないし論争も成立しないんではないか。トヨタアワードしかり。

ま、その違いをいちいち宣言してもらう必要があるものでもないと思うが。それは受信者側がきちんとリテラシーを持って受け取るべきものだというのが僕の考え。とはいえ、そのリテラシーを育てるのがアートやその批評(そしてそれを媒介するメディア)に課せられた最も重要な役割なんじゃないか、と思う。世界はそんなに単純じゃない、その多様さを認めること、だろう。

あとついでと言ってはなんですが、アーティスト側も、作品の中身はもちろんだけど、今の時代むしろその作品が世の中にどう流通するのか(させるのか)という「興行」の部分での企みがないと、本当の意味で生きていけないんではないかと思う。例えば、全く同じ公演チケットを0円、3000円、20000円と価格設定する大橋可也&ダンサーズや、短いもので5分などという掌編レパートリーを積み重ねるモノクロームサーカス、また、ストリート×youtubeからダンスシーン・アートシーンに殴りこんだcontact Gonzoなどが、今非常に面白い。そんな事を思う今日この頃です。


ワークショップメンバーによるさきらダンス道場がすごいよかった。女性3名とブロンドヘアーの男性1名。イギリスからの参加だそうだ。とにかく、そのメンバーがみなダンサーとして格好いい。体格も面構えも。これで終わる(らしい)のが勿体無い。振付は北村成美と佐藤健大郎。

チョン・ヨンドゥ枯山水系な作品でした。ちょっとだけ寝てしまった。。室伏quick silverはがっつり長時間。去年、ロンドンで観た作品。また観てもゾクゾクきた。終演後、室伏さんに凄いものを頂く。家宝です。

山賀ざくろ×泉太郎(東京)『天使の誘惑』
さきらダンス道場(栗東)『Don’t do that,Do!! 』
チョン・ヨンドゥ(韓国)『風の合間で in the pauses of the wind』
室伏鴻(東京)『quick silver』