▼このブログについて(更新停止中)
2004〜2009年夏頃までの関西のコンテンポラリーダンス公演をメインとした目撃録です。その時期に関西であったコンテンポラリーダンス公演の8割方は観てると思います。その他、民俗芸能、ストリップ、和太鼓、プロレスなども。2000年の維新派『流星』から見始めて、多い年は年間270本。2007年は、エジンバラフェスティバル、ダンスアンブレラなど半年に渡る欧州漫遊の記。2010年以降もぼちぼち劇場には出かけていますが、更新する時間はなくなり現在放置中のブログです。


ポかリン記憶舎『煙の行方』

TOKYOSCAPE
06年7月
須佐命舎

時間がなかったので、京都駅からタクシーに乗る。しかし運ちゃん、須佐命舎をご存知でない。おいおい迷うなよ。まあ地図があったので問題ありませんでしたが・・。近辺まで行くと、辻々に浴衣の女性が立って案内している。日が傾きかける頃合い、石畳のつづく西陣の町並みと浴衣姿の女性。タクシーから降りてぶらぶら歩いて会場へ。すでにふわふわ、非日常な感覚に囚われて心地いい。

この独特の浮遊感というのが、ポかリン記憶舎の特徴とのことで、「地上3cmに浮かぶ楽園」、「半睡ぎりぎりを漂う物語」、「日常と非日常の狭間をたゆたう麻薬のような時空間」と紹介されるその作品世界に、会場に入る前から徐々に引き込まれてゆく。

会場の須佐命舎は、普段は西陣織のミュージアムスペースとして使われているらしい。アメリカ人の宮大工によって95年に建てられた、和風なのか洋風なのかよく分からない不思議な建物です。50席ほど?の客席と、小さな舞台。2階まで吹き抜けになっていて、その奥の小さな中庭に面して一面のガラス窓。舞台上では小さなテーブルに、2匹の金魚が泳ぐ金魚鉢、その横にりんご酢ジュースの入ったグラスが水滴を滴らせています。

ストーリー:
残暑に忘れられた水槽のような部屋。日舞教室の控え室。水も滴る浴衣姿の女たちが火照った身体を休ませる。主人不在の控え室で、女たちの身体から滲み、煙のように立ち昇ってくる業の数々が夕日に晒されてゆく。

浴衣姿の女性4人。とりとめもない会話が独特の間でつづられる。聞いていると現代の物語のようですが、個人的には大正時代をイメージして観ていた。りんご酢ジュースをめぐる執念、座敷童子の影、水をかく仕草、タイトルにもなっている「煙の行方」。。

現実感覚からの遊離ぐあいがなんとも絶妙です。脳内に広がるイメージ世界と舞台上のパフォーマンスの間をふわふわと行き来するような観劇体験。アンビエントな音響とも相まって、なんともまさしく「地上3cmに浮かぶ楽園」、「半睡ぎりぎりを漂う物語」、「日常と非日常の狭間をたゆたう麻薬のような時空間」。素晴らしすぎる。

可笑しいセリフのやり取りなんかもあって楽しめました。演じる女優もク・ナウカ(寺内亜矢子)と五反田団後藤飛鳥)から客演に迎えるなどハイレベル。時折挟まる、無言で舞うようなシーンでは、少しばかし動きのクオリティに物足りなさはあったけど。。あれらのシーンでは下手に動きだけを振り付けすぎないほうがいいと思った。ほんとに動きだけで見せられるほどでは全然ないので。そこはやはりダンサーとは違う。セリフをしゃべってこそ、そこに見ごたえある身体なり空間なりが現れるわけで。最近ちょくちょく演劇寄りの舞台も見るようになって、そんなことを思ったりしました。

ちなみに、主宰で作・演出の明神慈による「体内浮遊力を活用した俳優訓練法“ポかメソッド”に支えられた」身体とのこと。また機会があれば絶対観よう。