サシャ・ヴァルツ&ゲスツ『d'avant』
びわ湖ホール夏のフェスティバル2005
2005年7月
びわ湖ホール 中ホール
ドイツより来日のサシャ・ヴァルツ&ゲスツ。サシャ・ヴァルツ(女性)はドイツではピナ・バウシュに次ぐ振付家と目される人物らしい。といっても今作は、サシャ・ヴァルツの振付作じゃなくて、出演する4名の男性ダンサーの共同制作。サシャ・ヴァルツはまったく関わっていないそうだ。4名のうち2名がサシャ・ヴァルツのカンパニーのダンサーで、あとの2名は別のカンパニーのダンサー。ベルギー人2名とカナダ人、スペイン人。へ〜、そうなのか。ドイツ年ということもあっての来日で、ドイツ関連機関も主催や後援に名を連ねているのに、もはやドイツもコイツもない。いいですね、ダンスらしくて。
4名のダンサーは、ダンサーであるとともに歌手・声楽家でもある。作品の中では終始、彼らの歌う(もちろん生歌)中世ヨーロッパの宗教歌が厳かに響く。だけど重い雰囲気では全然なく、衣装はおしゃれなスーツ、セットは工事現場のような足場が背後に組まれ場末なストリートの雰囲気。床面はレンガが敷き詰められた円形のスペースが中央にあり、そのまわりは合板むき出しのままで、木の削り粉も払われないまま。床に転ぶとスーツが木の粉で汚れる。バタバタと動くと、舞台上がもわっと埃っぽくなる。とりあえず、それがとてもかっこよかった。なんとなくだけど、ガイ・リッチーやなんかのスタイリッシュな群像劇を観るような感じかな。
踊りも、とにかくアイデアに満ち満ちていて、びっくりした。こんなダンスがまだあったなんて!けっこう、長い間いろんなダンスを観てるけど、ほんと初めて観るような踊り、動きが盛りだくさんだった。すごい。2人が両手を繋いだまま、その腕を絡み絡まれ展開したダンスが特に印象的。
ほかのシーンも、とにかくアイデアが面白い。男友達4人が集まり、あーだこーだしながら作ったんだろうなあ、という感じ。その自由さ、奔放さ、バカバカしさ、がかっこいい。それに要所要所に見せる、ある種宗教的なシーンが美しく、ラストに向けての一連のシーンは、確実に胸を打たれる。確実。まごう事なき傑作でした。