伊藤キム、白井剛『禁色』
2005年6月
京都芸術劇場 春秋座
冒頭、いきなり歪んだギターが炸裂するロックが鳴り響き、照明は妖しく稲光る。舞台奥全面には鏡面のような加工がなされていて、開演前こそ自分達がいる客席が映し出され、とてもアート的な趣向に感じられたものだが、二人が登場すると、それはもはやヌードショーか風俗店のそれになってしまいました…。なぜなら、二人とも全裸。。
しかも、出て来かたが良かった。その鏡面に向かい合うかたちで、両側からそれぞれコミカルな横歩きで出てくる。つまり、客席にはケツは丸出しだけど、前は見えない、けど鏡に映って見えるか見えないか、その期待の持たせ方(私は何を期待してるんだ?)、じらし方が絶妙。バッカス最新号の対談によると、伊藤キムはストリップ小屋からキャリアをスタートさせたそう。
――ストリップ小屋で舞踏に出会った。
伊藤キム: そうですね。新宿にあったモダンアートって劇場で、たまたま照明や音響のバイトやってた時に舞踏ダンサー達に会って。踊りのデビューもそこだったんです。(後略)
土屋尚武: 伊藤キムのすべてがそこにある気がする。
『Buccus(バッカス)』03号 p68-69
ま、じらすも何も、すぐにそのまま全裸で舞台所狭しと踊りまくるんですけど。でも、他の人のブログによると、なにか特殊メイクのゴムのようなものをかぶせていたとの情報も。たしかに、ちょっと青っぽかったけど、それは剃毛したために青みがかってるのかと僕は思って観てた(実は、東京公演の感想ブログを読んで全裸の件は知ってた、けどまさか剃ってるとは・・、それが一番ツボでした)。ただ、そのモノでエアギターしたときに異様に伸びてたように見えたので、ゴムなのかもしれない。不明。
いずれにしろ、この最初のチンチンのシーンは、土方巽が屹立した男根オブジェを装着して踊っている、あの有名な舞踏史の1ページに対するものとして着想されたシーンなのかな、と思って見ました。
ということで、この『禁色』は1959年に土方巽・大野慶人によって踊られ、ここに「舞踏」が始まったとされる記念碑的な作品。つまり、舞踏家にとってはとても重い作品。それにこのたび伊藤キムが挑んだわけで、まさかいきなりロック&フルチンとはな〜。やられた。
その後は服を着て、それぞれのソロと2人でのシーンを織り交ぜ展開。音楽はクラッシックやミニマルノイズなど静かなものがメイン。美術・照明もシンプルながら綺麗で印象的。ダンサーとしては白井剛が、完全に伊藤キムをくっていたように思った。