BATIK『SHOKU -full version-』
トヨタコレオグラフィーアワード2003受賞者公演
04年8月
シアタートラム
今最も注目を浴びるBATIK。NHKでトヨタアワードの紹介があった時に、少しだけ映像で見たけど、そのたった数分だけでも、それまでに見たどのダンスよりも強烈だった。ビデオに録って何回巻き戻して見た事か。
今回は2002年初演の2作目、『SHOKU』のフルバージョン(1時間少し)。主宰・振付の黒田育世曰く「再演できない」作品。ポストトークでそう話していて、こうやって東京まで観にきて本当に良かったとつくづく思う。なぜ再演できないか。それは、あまりにも激烈すぎて、肉体的にも精神的にも安易に取り組める作品ではないから。
ダンサーは黒田も含めて、女性7名。のっけからレッドゾーン突入、レブリミッターぶっちぎって、爆発寸前。やばい。これはやばい。ポストトークのゲスト近藤良平(コンドルズ)も感想を聞かれて、とりあえず「やばいっすよね」と言ったと記憶するが、本当に「やっば〜」というのが正直な気持ち。
なかでもやばかったのが、黒田以外のダンサーがステージ後方でひたすら立って崩れてを繰り返すシーン。本当にひたすら(黒田曰く「本当に立てなくなるまで…」)、しかもひざの皿を割らんばかりの勢いで崩れる。もう、誰か観客がステージに飛び込んで「いいよ!もういいから!わかったよ…、なっ?もうやめろ!やめろって!」と号泣しながら止めに入ってしまうのではないかというぐらいの極限状態。
その中で、ステージの最前中央では黒田がひとり気持ちよさそうに踊る。とても見ごたえのある美しくかっこいいダンスだが、この人の場合は、なぜか要所要所に、「ぴたぴた」とか、「ひゅん」とか、「ぺちぺち」といった感じの妙にキュートな動きが入る。これは、とてもかわいいけど、やっぱりこわい。後ろではひたすら、半ば無意識状態かのように、立っては崩れるダンサーが視界にあるままだ。黒田さん、あんたって人は…。
他のシーンも、かなり暴力的。見ようによっては残酷と言ってもいい。そんな振付けをダンサー達は受け止め続ける。黒田も黒田だが、他のダンサーもダンサーだ(実際、体はボロボロだそうな)。何を思って黒田作品に参加してるのだろうか。誰か制作過程のドキュメンタリー映画を撮ってくれないものか。
音楽の音量、激しさなんかも突き抜けられるところは半端なく突き抜けている。その辺のエンターテイメントな気質も申し分ない。選曲もかっこいい。究極のアート。究極のエンターテイメント。ものすごいものを観た。あぁ〜、もう一回観たい。
追記>小道具の懐中電灯は、シーンによってはちょいとマヌケな感じに見えたけど、そのマヌケな感じも悪くない(ミラーボールもしかり)。黒田育世はたまに天然系の発想をするようだ。