クリウィムバアニー『贅沢ラム』
08年05月
@神戸アートヴィレッジセンター KAVCホール
女の子10人ほどのカンパニー。主宰そして振付けはイデビアン・クルーのメンバーでもある菅尾なぎさ。PVどうぞ。
KAVCの広報誌アートヴィレッジボイス(vol.53)には菅尾自身の言葉で「男子は川村ゆきえがすきで、女子はそれなら杏さゆりのほうがいいってことです」という自作解説がある。
そういえば最近杏さゆり見ないなあ。ググってみたら、つい最近カムカムミニキーナ作品で舞台デビューしている。まあ世間的には、旬をすぎたアイドルの処世のうちと見られるんだろうけどなあ。。僕としては、来るべき所に来たという感じだ。次も、モト冬樹が座長のコメディで決まっているみたいで、順調に舞台女優としてのキャリアが重ねられると良いと思う。たぶんそう遠くない未来に、松尾スズキの舞台に出るだろうとここで予言しておこう。
話は戻って、先の川村ゆきえと杏さゆりの比較というのは、突飛な発言を装ってはいるが、その実、ずばり核心に迫る発言だと思う。それは例えば、批評家の木村覚氏がこう指摘するように。
見る者は、ダンサーの運動ではなく身体自体へと眼差しを向けだし、フェティッシュな快楽へと落ちてしまいがち、で、その傾向に好都合なことに、白い柔肌露出の、幼少の頃から恐らくダンスを続けている、それ故か美しいプロポーションの女性たちがうろうろしているわけで、そうしたフェティシズムへの耽溺を、どう考えるかということに問題がなってくる。(中略)フェティシズムへ足を突っ込むのであれば、残酷な基準にさらされることになる。
〜 クリウィムバアニー「贅沢ラム」(@吉祥寺シアター) Blog:Sato Site on the Web Side
杏さゆりのグラビアでの仕事を見てきていない人には、なんのことやらと思うだろうが、彼女のグラビアにはその「残酷な基準」から逃れようとする志向があったと思う(一例としてジウジアーロに喩えられる身体)。だから、彼女は当時、松尾スズキやリリー・フランキーといったアート寄りサブカル方面からいやに評価が高く受け入れられていた。その一方、川村ゆきえは所属事務所移籍のトラブルを発端にしてまさにその「残酷な基準」の餌食になってしまう。絶頂期に1年もの活動休止を余儀なくされ、あげくアダルトビデオ出演の噂にまみれた。
クリウィム・バアニーのような女の子カンパニーが“川村ゆきえではなく杏さゆり”と言うのは、そういう意味(「フェティシズムへの耽溺を、どう考えるか」)で非常に戦略的な思考に基づいた発言だと思う。なかなか危ういバランスの上ではあると思うが・・。まわりを見回すと例えば、yummydanceやピンクやプロジェクト大山などは、そういうバランスからどう転ぶか微妙なライン上にあるカンパニーだろう。そのようなラインから見事に足場を固めてポジションを築いてみせたカンパニーはといえば、やはり珍しいキノコ舞踊団だろうか。
少し際どい議論のような気がしないでもないが、あえてものすごーく現実的な所でいえば、つまり「女性ファンをきっちり作っていかないと先はないよね」という事であろう。杏さゆりがそのグラビア作品において、中川翔子や磯山さやかなど同業の女性からも熱烈な支持を得ていることは有名な話だ。キノコが幅広い人気を得たのは女性の観客が「カワイイ」と言ったからだ。yummydanceやピンクは批評家筋(完全な男性社会)からの評価は高いが、果たしてどのくらい同じ女姓からの支持を得られているだろう。現代日本のカルチャーシーンで活動の幅を広げるためには女性の支持は不可欠となっている。「女子はそれなら杏さゆりのほうがいいってことです」という発言の見つめるところは、そうして世の「男子」の視線をはぐらかす、したたかな「女子」の戦略にあるのである。おそらく。
まあ、ただのムーブメントフェチの自分としては、単純に「ああ、もっとばっちり踊れるダンサーだけでやってほしい」と思いましたが。井出茂太のもとで経験を積んできたこともあってか、やはり群舞の振付けがとても気持ちの良いものでした。
振付:
菅尾なぎさ
キャスト:
東さくら、阿竹花子、金子あい、佐藤想子、菅尾なぎさ、丹野晶子(ロリータ男爵)、松浦羽伽子、松崎有莉
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*杏さゆりについて(06年03月)
杏さゆり写真集anzu n’roses 水着ファイターEVOLUTIONS
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