▼このブログについて(更新停止中)
2004〜2009年夏頃までの関西のコンテンポラリーダンス公演をメインとした目撃録です。その時期に関西であったコンテンポラリーダンス公演の8割方は観てると思います。その他、民俗芸能、ストリップ、和太鼓、プロレスなども。2000年の維新派『流星』から見始めて、多い年は年間270本。2007年は、エジンバラフェスティバル、ダンスアンブレラなど半年に渡る欧州漫遊の記。2010年以降もぼちぼち劇場には出かけていますが、更新する時間はなくなり現在放置中のブログです。


阿波木偶箱廻し@百太夫神社祭

08年1月
西宮神社(百太夫神社前)

ここ数年ずっと観たいと思ってたのでやっと。なにせ一番ご近所に存在する(いやもう消滅してはいるのだが)とらでぃっしょなるぱふぉーみんぐあーつですし観とかないわけにはいかない。まあ西宮が日本の人形芝居の聖地であったことを知る人が西宮市民でも如何ほどいるか。僕は高校のときの日本史の先生に教わった。当然教科書に載っているような事柄ではないのだが、その先生がかなり変わった先生で、脱線してそういう話をいろいろしてくれた(今思えば網野史観全開の授業だったな)。



西宮神社から徒歩10分ほどの街中にある傀儡師古跡。


時は室町、西宮神社のすぐ近く散所村(現・産所町)というところに住みついていた「夷舁(えびすかき)」なる人形遣い(傀儡師)の集団が、えびす信仰の普及とともに大評判をとる。勢いに乗った彼らは、猿楽能をフィーチャーたり、浄瑠璃とコラボしたりして人形芝居を一大エンターテイメントに仕立て上げた。それが今に残る淡路人形浄瑠璃文楽など各地に残る人形芝居、さらにはあのサンダーバードにまで直結する源流となったのである。

太夫神社は、そんな彼ら傀儡師たちが信仰する神様で、毎年1月5日の祭日に人形芝居が奉納されます。とはいえ当地西宮では残念ながらその人形遣いの命脈が途絶えてしまっており、今日は阿波徳島から阿波木偶箱廻しを復活する会を迎えてのパフォーマンス。また、中高生が主体となっているらしき淡路の「淡路人形芸舞組」もサポートに入っていました。



西宮神社の大きな拝殿の小脇に佇む小さな百太夫神社の前に、天秤棒で前後に大きな箱(中に人形が仕舞われている)を担いだ一座が入場してきて、ひとしきりの神事の後、パフォーマンスが始まりました。阿波に伝わる箱廻しは、門付け芸、大道芸として発展した人形芝居であるらしく、人形一体をひとりで操り(後世に確立した文楽などは三人遣いが基本)、浄瑠璃(セリフ)も自ら語っていました。「三番叟まわし」に始まり、「傾城阿波鳴門」と「絵本太功記」のダイジェスト、そしてメインの「えびす舞」。女性の遣い手で、浄瑠璃もキーンと高音が響いてとても格好いい。面白い。

文楽でも完全に男性の世界(国立文楽劇場の研修生も女性には門戸が開かれてない)であるのに対して、乙女文楽とよばれる“女性による一人遣い”が特徴のジャンルがあります。文楽イマイチ退屈〜と思う人でも、たぶん“女性による一人遣い”のほうはけっこう面白く観れるのではないかなと。僕も今回はじめて観たのですが、そう思います。


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