Splintergroup 『Roadkill』
Dance Umbrella 2007
07年11月
@The Pit , Barbican Centre
もやがかった空間に、古びた赤い乗用車と灯りのチラつく電話ボックス。郊外のロードサイド風景のよう。クルマのなかには男女が寝ている。虫の鳴き声が遠くから聴こえる。目を覚ます男。エンジンをかけようとするがマフラーから白い煙が吐き出されるだけ。クルマから出てペットボトルから水をひと口。足元にペットボトルを置き、後方のトランクへ。ボロ布を取り出してボンネットへ向かう。足元に置いてあったペットボトルを蹴って倒してしまい立て直す。ボンネットを開けてエンジンルームを覗き込む・・・。どうやら故障して動かなくなってしまったようだ。
まるで映画のようなオープニング。ほんとうにダンスを観ているというよりも、映画かビデオ作品を観ているようだ。なにより音の使い方が映像的。どこかで観た事のある感じがする。少し経ってから、あぁラララ・ヒューマン・ステップスのビデオ作品『ベラスケスの小さな美術館』だと気付いた。なぜ気付いたかと言うと、ダンスがもろにラララ・ヒューマン・ステップスだったから。
しかし物語は少しずつ不穏な展開を見せてゆく。電話ボックスから助けを求めようとしても駄目だったようで、結局はゆっさゆっさとクルマは上下運動。そこに突然、懐中電灯を片手に現れる男。一体何者なのか。ここからの展開は、時間軸や、現実と夢との境界があやふやになってゆき、説明しようにも僕も分からなかった。だが、彼らがなにか重大な事態の渦中にあるらしいことは明らかだ。作品タイトルが示すとおり、これはとある交通死亡事故にまつわるエピソードなのである。
横っ跳びに宙を回転する振り付け(まさにラララ)は事故の瞬間か。激しくクルマに体当たりし、ボンネットのうえを転がりもする。頭上からは、ばらばらと大量の石ころが降り注ぎ激しく車体の鉄板を打ち鳴らす。過去の記憶か、死者の幻影か。時間はループして、なぜかオープニングシーンに戻ったり。冒頭のとある細かな演出がここへの伏線だったと気付かされる。やはりとても映像的(MTV的センス、とも言っておこう)。
なかなか日本ではお目にかかれないような作品だ。日本では、おそらく空間や身体にこだわるあまり、視野狭窄に陥りその表現の可能性を狭めてしまっている事も多いように思う。まあムーブメント、ムーブメントばかり言ってる自分が言うのもなんですが。。でも時間芸術という観点で見ると、映画などから盗めるテクニックは多いし、実際にみんな使ってる。5人以下までぐらいの小規模カンパニーでは必須かもね。
Splintergroupに戻る。やや後半だれたが客の反応も熱い。オーストラリアのカンパニーです。昨年のAJdXでBATIKと共演してる。なお今日の公演はダンスアンブレラのプログラムであると同時に、バービカンシアターが主催するBITEというフェスティバルの一環でもある。んで、気付けばこの公演が今年のダンスアンブレラ、ラストの1本だった。ああ終わった。ちょっと寂しい。また、まとめエントリUpしようと思います(あ…、エジンバラまだまとめてなーい!)。