指輪ホテル『CANDIES - girlish hardcore』

精華演劇祭
07年3月
精華小劇場

暗転。ヒールの先から零れる一瞬の火花。チラチラチラ。終わった。。。息が止まった。終演してからも、しばらく放心。火花のチラチラがフラッシュバック。旅の終わりの儚さに似て、なんとも愛おしい。席を立ってぞろぞろと出口に向かうという、情けない現実に戻るのが嫌になる。

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ウワサに聞こえた指輪ホテル初来阪！！前売り買いそびれたので早めに会場へ行くと、すでに入場を待つオッサン行列。うわー･･･、と思う。こんな客ばっかりやったらどうしよ･･･と、ちょっと不安。はたから見れば自分も同類？嫌だー。距離を置いて開場待ち。少しづつお洒落っぽい若人も集まり客層も中和されてひと安心。（しかしスケベ心で舞台を見るのは極めて正しいと思う！）

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一応、演劇にカテゴライズされる指輪ホテルだが、そのパフォーマンスは身体を強く意識させるもの（私の耳にウワサが届いていたことからも分かるとおり）。今回の精華演劇祭のパンフにはJCDNの佐東氏が推薦文を寄せている。先日は維新派の松本雄吉がアフタートークに登場している。関西は初だが、すでに海外でも高い評価を得ている。言葉の壁を越えて、人の心を打つパフォーマンスだ。

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5名の女性パフォーマー。顔にはかわいい動物のお面、背中にはランドセル。蠅や蝉が描かれた球体のクッション。「わたし、とんでもない日に死んじゃった」と繰り返されるモノローグ。結婚式の日にお葬式。寓話のようなやり取り。仮面も服も剥ぎ取り素顔のパフォーマー。みな美人。背中には梵字のタトゥー。女性の股間からホットプレートへ排泄物。できたパンケーキを食べさせあう。延々続くバスケのパス回し。薪の束と、田舎訛りのセリフ。リアルでグロテスクな動物面へ。老いた世間話。そしてまた素顔のパフォーマー。一列に並び服を脱ぎながら単調に踊る。クラップと指ならしと足踏みでリズムをとりながら、煙草をふかしながら、下着姿で踊り続ける。煙草が短くなってゆく。唇に火が迫る。ひときわ大きいクラップと足踏みが鳴る。もう終わる。おもむろに片足を後ろに跳ね上げる。カラダを捻り煙草の火をヒールへ。暗転。チラチラと零れる一瞬の火花が五つ･･･。

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最後のシーンはいつまでも心に残りそう。「好きな女性の仕草は？」というよくあるアンケートがあれば「後ろに跳ね上げたヒールの底で煙草の火を消す仕草」と答えたいぐらい。あと、あのパンケーキをすべて食べきってしまったのが、けっこう「うわ」と思った。内臓感覚に訴えるような、とでも言おうか、なにか土俗的でグロテスクなものが潜むパフォーマンスだ。あと、どこかノスタルジー。また他の作品も観たい。

■作・演出
羊屋白玉
■出演
生田和余、坂田有妃子、村田朋未、卯月妙子、羊屋白玉