楽劇団ちんどん通信社年末公演
06年12月
飛田オーエス劇場
飛田にこんな劇場があるなんて知らなかった。ネットで検索してもほとんど情報が出てこない。私はてっきり成人映画をかける映画館かと思っていた。行ってみてびっくり、普段は大衆演劇をずっとやっている劇場なのだ。こんな場所で・・・。いや、こんな場所だからこそ、か。
日本屈指の色町、飛田。大正時代に築かれた遊郭で、戦後も“赤線”として多いに栄えた場所。そして今も、日が暮れるとピンクの照明に艶かしく浮かび上がる“姫”達がこの一帯を妖しく彩る。別の時代にタイムスリップしたかのような、にわかに信じがたい光景が広がる(というか感動する)。
そして、すぐ隣は釜ヶ崎。公式には「あいりん地区」と呼ばれる、日本屈指の日雇い労働者の町だ(古くはそれこそスラムだった)。さらに、すぐ北は通天閣そびえる新世界。まさにディープ大阪の最深部。色町、芝居町、貧民街がセットになって形成された、まさしく「悪所」である(だった)〔『「悪所」の民俗誌―色町・芝居町のトポロジー (文春新書)』〕。
そんな場所にこうして大衆演劇の劇場が残っているというのは、もっともと言えばもっともだけど、しかしやはり「よくぞ今まで・・・」という感慨も大きい。人知れず深海に生きていたシーラカンスを発見したみたいな。
例えば、よく似た町として神戸の新開地があるが、飛田・釜ヶ崎界隈と比べれば、なんとまあ健全なことか(そんな事もないか)。新開地の大衆演劇場は、おっかけのおばさんファンなどで賑わっているイメージがあるけど、この飛田の劇場は・・・普段どんな感じなんだろう。端的に言って、ここ客入るんかなあ?興味引かれる。。一度大衆演劇をここに観に来よう。
さて、このような町にある飛田オーエス劇場だが、行こうと思えばわりと行きやすい場所にある。地下鉄動物園前駅を出て、南に伸びる商店街を10分ほどくだる。途中、左に入る脇道に目をやると賑やかにのぼりが立っていてすぐ分かる。しかし、本当に古い劇場。しかもレトロ趣味にひたれるような古さではなく、かなり汚らしい。でも立派に花道などもあったりして、私にとってはすごく新鮮。
お客さんは、サイドまでぎっしり立ち見が入るほどの超満員。老若男女さまざま。この界隈らしい風体のオッサンも多い。この年末興行も恒例で、ファンもたくさんいるようだ。演目は、チンドンパフォーマンスはもちろん、ゲストを交えての安木節、太神楽、ギター演歌、さらに楽劇「水戸黄門」からフラダンスまでバラエティ豊か。華やかで賑やかで楽しい。カラフルでかわいい着物姿でサックスを吹く女性なんて、大変に素晴らしいです。ラストは三本締めにて〆。また来年も来たい。
- 作者: 林幸治郎
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- 発売日: 2006/01/01
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