▼このブログについて(更新停止中)
2004〜2009年夏頃までの関西のコンテンポラリーダンス公演をメインとした目撃録です。その時期に関西であったコンテンポラリーダンス公演の8割方は観てると思います。その他、民俗芸能、ストリップ、和太鼓、プロレスなども。2000年の維新派『流星』から見始めて、多い年は年間270本。2007年は、エジンバラフェスティバル、ダンスアンブレラなど半年に渡る欧州漫遊の記。2010年以降もぼちぼち劇場には出かけていますが、更新する時間はなくなり現在放置中のブログです。


黒田育世×松本じろ『モニカモニカモニカ』

cannon262005-08-21

2005年8月
上之町會舘(岡山)

岡山市の中心部、まわりには官公庁の建物や大きなホール、美術館が立ち並ぶ一角にひっそりと佇む小さな稲荷神社。ちょうど美術館のすぐ裏手、建物の谷間に、道路から細く長く参道が奥に伸びて社がある。その境内に建つ、いかにもレトロな建物。それが目指す上之町會舘(かみのちょうかいかん)でした。レトロつっても、お洒落なレトロ(例えば京都芸術センターとかアートコンプレックス1928のような)じゃない。レトロというより、廃墟。岡山上之町商店街の従業員宿舎として昭和30年代に建てられたものらしい。今は、アートスペースとして様々に運営されてるそうです。変にリノベーションしないで使ってるのがいいですねぇ。ちなみに稲荷は「甚九郎稲荷」といって、岡山城に入っていた宇喜多秀家小早川秀秋絡みの伝説が伝わる。かなりいい感じ。社の前に赤い舞台が設えられてて、ここでやるの?と期待高まる。

受付を済ませてまずは建物2階へ。建物の中も廃墟のままでいい感じ。湿った砂が敷き詰められた小さなスペースは、すぐに超満員に。ここで始まるのかと思ったら、屋上へ移動という。屋上に上がってもこじんまりしたスペースしかない。スタッフの方が必死に客を詰めさせてアクティングエリアを確保する。振り仰ぐと岡山シンフォニーホールがキラキラと異様にそそり立っている。岡山城が見えるであろう方向は、美術館の無機質な壁がそびえる。空は雨が降るか降らないかという天気。涼しくて気持ちいい。照明が落ち、松本じろの演奏が夜空に響く。そして黒田育世は・・・、上!!

なんて言うんでしょう?屋上に出るドアのところって屋上からまだ中1階分ぐらい、上があるやん?あの上。そこで単調にトントントントン飛び跳ねるような動きをメインに踊る。衣装はダボッとした黒?のワンピース。照明が下から当てられて、かなり怖い画に。影が大きく美術館の壁に映って不気味。ひとしきり踊ってその後、あぁやりそう…、と思っていたことを…、あぁやっぱり。飛び降りました。。そんなに高くはないけど、でもいきなり飛び降りられると「うわっ」ってなる。さすが黒田育世ってな感じのシーンでした。そしてまた激しく踊り狂う。冒頭から圧倒的。でも、その後に、かわいいミニのワンピースに着替えて、明るくハイテンポなダンスも見せてくれました。こういう感じのは初めて観たけど、これまたGOOD。

20分〜25分ほど?で第一部(屋上編)は終わって、次は2階の室内スペースへ。砂敷きの狭いスペース。動き回れず、足もとられるけど、そこは卓越した身体バランスで、見事なムーヴメントを次々繰り出す。すばらしい。思うに黒田は、踊りの緩急がとてもいい。特に速い動きから急にフヮッと緩まる時。美しい。第二部(25分ほど?)が終わると、ワインタイムということで何人かの客は、踊り終えた黒田にワインを注いでもらえる(ここは変なキャラ作らんで普通でええのにと思った)。

そして第三部、外へ出て稲荷社の前に設えられた小さな舞台。赤い鳥居に赤い舞台。脇に狐の像が佇む。奥の賽銭箱の前で松本じろの演奏。うーー最高!黒田育世にはやっぱり民俗系アイテムがよく似合う。もうとんでもなく良かった。この第三部は、他より長くて40分弱ぐらい?踊り続ける。すごい。最後は大の字に倒れて暗転、終わり。大拍手。これで完全燃焼かと思ったら、「黒田さんがまだぶっ倒れてるので、そのあいだ一曲聴いてください」と松本じろが緩やかな曲を演奏しはじめると、、ムクっと起きてまた踊りだす。狐の影に隠れんぼしたりとコミカルに。そして、最後は松本じろと2人楽しそうに踊りながら、神社を出てどこかへ去っていきましたとさ。

ほんまよかった、岡山まで来て。久しくなかった、非日常があった。(普通に劇場でダンスを観るという行為は日常になってるからな〜、あんまよろしくない)