▼このブログについて(更新停止中)
2004〜2009年夏頃までの関西のコンテンポラリーダンス公演をメインとした目撃録です。その時期に関西であったコンテンポラリーダンス公演の8割方は観てると思います。その他、民俗芸能、ストリップ、和太鼓、プロレスなども。2000年の維新派『流星』から見始めて、多い年は年間270本。2007年は、エジンバラフェスティバル、ダンスアンブレラなど半年に渡る欧州漫遊の記。2010年以降もぼちぼち劇場には出かけていますが、更新する時間はなくなり現在放置中のブログです。


金森穣『no・mad・ic project 7 fragments in memory』

2005年3月
シアター・ドラマシティ

ポストトークでの質疑応答の最後、「逆に客に対して質問はないか?」という客の問いに金森は「今日、コンテンポラリーダンスを観たのが初めての人は?」ときた。結果、そのときポストトークに残っていた客の、5割弱ぐらいだろうか、手が挙がる。さらに「きっかけは?」の問いに、ある客が「NHKトップランナーで見て」と答え、金森が「トップランナーがきっかけだったという人」と呼びかけると、さっき手が挙がった人達がほぼそのまま手をあげたような感じだった。

という事でトップランナー金森穣。この『no・mad・ic project』は2003年に初演され、今回キリンダンスサポートを得ての再演となる。出演は自身の率いるNoism05。「7 fragments in memory」とあるとおり、過去につくった小作品7つを再構成して1本にまとめた作品である。以下がその7 fragments。

0. Voice ('03)
1. L ('03)
2. 1/60 ('95)
3. WW ('01)
4. Out of the earth...from heaven ('97)
5. Under the marron tree ('97)
6. La dent-de-lion ('98)
7. Me/mento, 4am"ne"siac ('01)

冒頭の『Voice』は、個人的にはどん引きしてしまった。ダンサーは開演前から客席通路をうろうろしており、そのうちに突然芝居がかり「あやこ〜」やら何やら人の名(たぶんダンサーそれぞれの名前)を叫び走り回る前衛風味の展開に。舞台に上がって踊りはじめてからも、自己存在を問うようなモノローグがかぶさったりする。正直、金森穣はあまり言葉を使わない方がいいと思う。前回、『black ice』の時も思ったし、この『Voice』で確信するに至りました。一方、作品外で発する彼のピュアで真摯な言葉(ポストトークや今回パンフに載せている文章など)は面白いと思う。

今回一番良かったのは『Me/mento, 4am"ne"siac』。ワールドクラスの才能にしかなしえない作品。鮮烈。ヨーロッパスタンダード(?)というかベーシックであまり面白みのない動きをつくるイメージがあったけど、意外と変な(ひと癖ある)振付もあって面白かった。

その他、これは単純に自分の好みだがノイズエレクトロニカ系の音(池田亮司による)でビシバシ踊る作品(『1/60』『WW』)は好き。ダンサー皆がハイレベルなので見ごたえ抜群でした。

『WW』は金森がソロで踊る作品でファンタスティックなことこの上ない。今まで観たソロ作品では断トツでベスト1です。あと、井関佐和子のソロ『Under the marron tree』は、大きなイスとテーブルに寄り添う小柄な井関が儚く、じわりと印象に残る作品。

また、振付や個々のダンサーのテクニックだけじゃなく、「おっ」と目を惹くような演出のアイデアもあるので面白い。左右の幕と上からの幕を同時に操作し、方形の窓がズームインズームアウトするように幕を開け閉めするとか、『Me/mento, 4am"ne"siac』でも床に長方形に引かれたラインを蛍光素材か何か(?)で発光させたり。ただ、『Out of the earth...from heaven』での、砂の受け皿は間抜けだった。

『black ice』http://d.hatena.ne.jp/cannon26/20041106