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2004〜2009年夏頃までの関西のコンテンポラリーダンス公演をメインとした目撃録です。その時期に関西であったコンテンポラリーダンス公演の8割方は観てると思います。その他、民俗芸能、ストリップ、和太鼓、プロレスなども。2000年の維新派『流星』から見始めて、多い年は年間270本。2007年は、エジンバラフェスティバル、ダンスアンブレラなど半年に渡る欧州漫遊の記。2010年以降もぼちぼち劇場には出かけていますが、更新する時間はなくなり現在放置中のブログです。


【明倫artレビュー】BLUE ROSE Dance Project 『La Revue de Cabaret』


BLUE ROSE Dance Project 『La Revue de Cabaret』
2009年9月5日・6日 一心寺シアター倶楽

※このレビューは京都芸術センター通信「明倫art」 2009年11月号に掲載されたものです(INDEXはこちら








惹き寄せられる、混じりあい渦巻くところ

ショーキャバレーでダンスを観る。という娯楽は今の日本では、悲しいかな極めて限られた機会しか持ちえない。そもそも、キャバレー小屋がほとんどない。もしかすると、世間からは何かいかがわしいイメージを持たれている可能性もなきにしもあらずだが(それはそれでいいと思うが)、どっこい、ダンスに限らず多種多様な芸術・芸能の猥雑なパワーが混じりあい渦巻くキャバレーの世界は、まだまだ多くの観客を魅了できる可能性を秘めている。その事は、今回取り上げる公演の客席(老いも若きも男も女も)が、なによりも証明していた。

大阪・天王寺の小劇場、一心寺シアター倶楽が1ヶ月という期間に渡って、いつもの劇場をまるまるキャバレーに変身させた。その名もCABARET Le Rouge(キャバレー・ラ・ルージュ)。キャバレーらしく、上演中でも飲食可能、前列にはテーブル席もセットされ本格的な雰囲気。ロビーではカジノだって楽しめる。ここで、期間中さまざまな音楽ライブ、ミュージカル、コメディショーなどが連日上演された。

そのなかで、BLUE ROSE Dance Projectによる『La Revue de Cabaret』と題されたショーを観た。BLUE ROSE Dance Projectは、ショーダンサーとして様々なキャリアを積んだ飯干未奈(いいぼし・みな)が主宰するカンパニーだ。以前には、フェスティバルゲート時代のArt Theater dBで、多くの観客の度肝を抜くショー(まさかあの芸が見られるとは!)を企画演出している。

今回も、自身のカンパニーだけでなく、様々なジャンルのアーティストを迎え、めくるめくショーを繰り広げた。大きな羽毛の羽を持って舞うファンダンス、ひらひらと長く垂れる衣装で舞うサーペンタインダンス、セクシーな衣装を脱ぎ捨ててゆくバーレスクダンス、独特のコミカルさが楽しいインド映画におけるミュージカルダンス、さらにはインド古典舞踊、フラメンコ、タップダンス、そしてジャグリング、ドラァグクイーン、金粉ショーまで。カンパニーの演目では古今東西のレビューショーやオリジナル作品を華やかに舞い踊った。

これが、多種多様な芸術・芸能の猥雑なパワーが混じりあい渦巻くキャバレーの世界。観客は、舞台に踊るパフォーマー達の美しさ、力強さ、潔さに大いに酔わされたことだろう。この気持ちのいい感覚にまた酔いたいと思っただろう。今度は誰か友達を連れてまた来たいと思っただろう。不思議だが、キャバレーショーにはそうしたチカラが強くある。舞台公演を観に行くという文化がなかなか広く根付かない今の日本に、ぜひにもっとキャバレーを、と思うのである。